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わくわく着物~着物の愉しみ~ 臥竜亭へようこそ!

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歌舞伎-ミ

■ □■歌舞伎をテーマにした小説(1)■□■

◆「写楽」著:皆川 博子◆
◇角川書店刊/1994年12月発行(当時1262円+税)◇


 突然ですが、学生時代、私は俳優の真田広之さんのファンでした。「魔界転生(当時、ジュリーとのキスは衝撃的だった!)」から始まり、「道頓堀川」「麻雀放浪記」「新宿鮫(奥田瑛二ともやっていた)」…と、何となく縁があり、他のご贔屓ができてからも、けっこう映画を拝見しております。「写楽」もその一つ。
 皆川博子さんは映画「写楽」のシナリオを手がけ、それをもとに小説化したのがこの本です。浮世絵師・東洲斎写楽は誰だったのか、には諸説あるようですが、皆川さんは、「写楽は写楽」といい、訳あって舞台に立てなくなった、歌舞伎の大部屋俳優を写楽に据えています。
 ストーリーは、簡単に言ってしまえば、写楽の誕生から、10ケ月ほどの活動の後、なぜまた消えてしまったのか…、というお話です。
 推理小説でも高い評価を受ける皆川さんですが、これは写楽探しではなく、歌舞伎の世界を下敷きに、人間の生のドラマと営みが描かれていて、かなり切ない話です。今でこそ高尚なイメージのある歌舞伎ですが、昔は庶民の娯楽であり、良くも悪くも、生々しく身近なものだったんだな、という事がよく分かります。
 特に生々しい濡れ場が書き込んであるわけでもないですが、なんだか官能的。でも下品じゃなくて、しみじみ切ない。ちょっと日本人的湿っぽさがあるように思います。
「耽美の女王」。そう冠のつく作家さんはたくさんいらっしゃいますが、やはり皆川さんにこそ相応しい。ワタクシ、そう思うのであります。


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